2016.12.29

2016年ラスト、ももいろクローバーZを語る

さて、今回取り上げるテーマは僕が3年前から予告していた、とある女性アイドルグループについてだ。そのグループの名前は「ももいろクローバーZ」通称ももクロなのだ。
何だよ、いい歳してアイドルかよ、という声が聞こえてきそうだけど、ちょっと待った。どうも日本の芸能界でいうアイドルという言葉のイメージには偏見があり過ぎる。僕が考えるアイドルとは「自分が理想とするものを体現してくれて、そこから夢や希望を与えてくれる存在」ではないかと思うのだ。例えば野球少年にとってのアイドルはメジャーリーグで活躍するマー君こと田中将大投手だったり、サッカー少年にとっては本田選手や長友選手がアイドルだったりする。
ところが芸能界におけるアイドル、特に女性アイドルとなるとまずは疑似恋愛の対象というイメージが先に立つ。かくして疑似恋愛=実際の恋愛とは縁遠い=モテないオタクという公式が出来上がる。何だかキモいなあ、などという結論にされてしまうのだ。もちろん疑似恋愛の対象になることも若い男の子に夢を与えることだし、大切な要素であることには変わりないのだけれど。
さて、amazonのサイトとかで、ももクロのCDやDVDのレビューを見ていると年配の人のコメントが結構多い。中でも「今までアイドルなど関心が無かった」「洋楽ロックばかりを聴いていた」という人が多かったりする。かくいう僕もその一人だ。アイドルと呼ばれる人のCD、DVDの類いは購入したことが無いし、誰かに夢中になったことも一度も無い。ももクロにしたところで、3年ほど前までまったく興味が無かったのだ。もちろん名前くらいは何となく知ってはいたが、メンバーが何人いるかどうかの知識すら無かった。それが何故、ここまでハマってしまうことになったのか、それを今回を含めて何度かに分けて書き込んでいきたいと思っている。

ももクロの一番の魅力とは?それは人それぞれに違うだろうけれど、僕が思う彼女らの魅力は何と言ってもライブの凄さ。そしてそんなライブを可能にする楽曲の面白さだ。もちろん、ライブにしても楽曲制作にしても、彼女らだけで作れるものではない。アイドルというのはバンドやシンガーソングライターのように、方向性を自ら決めていくことができるわけではない。やはり所属事務所の方針というものが大前提になる。ようするに彼女たちを取り巻く「大人たち」の思惑だ。当然ももクロだって例外ではない。
僕がももクロを考えるときには彼女たちはもちろん、それを取り巻く運営陣も含めてが「ももクロ」だと思っている。
今回、テーマにするのは今から3年前の夏に行われた彼女らのライブでのお話。かなり古いお話しになってしまうのだけれど、勘弁願いたい。

ももクロの大型ライブには年3回の柱がある。12月下旬、クリスマス時期に開催される「ももいろクリスマス(通称ももクリ)」。春先の3月下旬か4月上旬に開催される「ももクロ春の一大事」。そして夏に開催されるのが「ももクロ夏のバカ騒ぎ」だ。いずれもドームやスタジアム、アリーナクラスの大会場で行われる。特に「夏のバカ騒ぎ」は炎天下の屋外の会場で行われ、ももクロメンバーもファンも汗だくで盛り上がる文字通り「バカ騒ぎ」となるライブで人気が高い。
今回テーマにする今から3年前、2014年の「夏のバカ騒ぎ」は7月26日と27日、日産スタジアムで行われ2日間で計12万人を動員。全国の映画館で行われたライブビューイングも含めると動員は15万人を超えるというももクロ史上、最大規模のライブになった。

このライブには「桃神祭」というサブタイトルが付けられ、そのコンセプトは「祭り」だという。そのコンセプトに沿って、ステージには高さ20mに及ぶ「神社」が組み上げられた。これがまんま神社の建物そのもので、ステージセットのレベルをはるかに超えた巨大なもの。ステージの床は板張りで、両サイドには日本庭園を思わせる太鼓橋や池、その脇にはタコ焼きや綿菓子の露店が並ぶという徹底ぶり。しかもその露店は実際に稼働していて、ライブ中にメンバーがタコ焼きやかき氷を食べたりという一幕もあった。
そして日本全国から様々なお祭り団体を招き、ライブのポイントで自慢のパフォーマンスを披露。徳島の阿波踊りや高知のよさこいや日本舞踊、さらには石見神楽や岩手の虎舞まで、その数たるや総勢600名に及ぶ。さらにこの日のためにももクロメンバーの浮世絵風イラストが描かれた、これまた巨大なおみこしやねぷたが用意され、クライマックスにはメンバーがそれに乗って歌いながらアリーナを練り歩くという演出でライブを盛り上げた。
そんなこんなでステージの総制作費用は5億円。巨大な神社は保管する場所が無いということでライブの後は解体されてしまったという。そしてこのライブの模様は翌日のワイドショーやスポーツ新聞に大きく取り上げられた。
確かに巨大な神社や600名以上が踊りまくるクライマックスシーン、さらには5億円という数字はワイドショー的にはインパクトがデカい。映像を観ながらアナウンサーやコメンテーターの人が「スゴイですね~」などと驚嘆の声をあげる姿が各局でオンエアされた。
まあ、それはそれで素晴らしいことだ。でも僕が取り上げたいのは、メディアには取り上げられなかったある試みについてなのだ。

ももクロは2013年の春から、大型ライブでは生バンドによる演奏を取り入れている。このバンドがまた豪華で、プロデューサーやアレンジャーとしても有名な武部聡志さんをリーダーに、コーラスやホーンセクションまで加わった総勢10名を超える大所帯。しかもメンバーは様々なライブやテレビの音楽番組でミュージシャンのバックを務める強者ばかり。例えばフジテレビで年2回放送される「FNS歌謡祭」。この番組は4~5時間にも及ぶ生中継の中で100曲近い曲数が演奏される。それこそ歌う人が違えば曲のテイストも違う。おまけに秒単位で進行する生中継、しかもリハーサルにかけられる時間も限られている。幅広い対応力とスキルが必要になるのだ。というのも、ももクロの楽曲はどれもクセのある曲が多い。転調が激しかったり、テンポが異常に速い曲もある。これをライブで完全再現するには、かなりの熟練したバンドメンバーが必要になってくるわけだ。
ちなみにこのバンド、ももクロのバックを務める際には「ダウンタウンももクロバンド」と名付けられている。これは1970年代に一世を風靡した「ダウンタウンブギウギバンド」のパロディ。もちろんももクロメンバーがそんな時代を知っているわけは無いから、運営陣の遊び心なんだろう。このあたりのセンスも僕のようなオヤジ世代を微妙にくすぐる。
もちろん「夏のバカ騒ぎ~桃神祭~」にも武部さんをリーダーとするバンドが参加した。総勢13名のメンバーの中には、いきものがかりやポルノグラフィティのプロデューサー・アレンジャーを務める本間昭光さん(キーボード)や氷室京介のバックギタリストとしても活動するDAITAもいて、これだけでも超豪華。さらに加えて、初の試みとして10名の和楽器奏者が参加した。その内訳は津軽三味線3名、尺八、篠笛が各1名、和太鼓が4名というラインナップ。曲によって通常の演奏に和楽器を加えたバージョンが披露されたのだ。

この和楽器隊のリーダーを務めたのが和太鼓奏者のヒダノ修一さん。ヒダノさんの言葉によると、皮などが多く使われる和楽器は気候の影響をモロに受けやすい。今回のような炎天下での野外ライブはお世辞にも良い条件では無い。実際、2日目のライブでは直前までゲリラ雷雨に襲われ、楽器のチョイスも含めて大変だったそうだ。さらに、和楽器はその性質上、転調の激しい音楽には向いていないらしい。ところがももクロの楽曲は激しい転調が売り物の場合が多い。例えば篠笛の奏者はチューニングを変えた笛を何本も用意して、それぞれに番号を付けて取っ替え引っ替えで対応したそうだ。
そして根本的な話になるが、そもそも6万人が入るスタジアムでの演奏など通常の和楽器演奏ではまず例が無い。巨大なスタジアムの観客全員に迫力ある音を届けること、それも通常のバンド演奏の中で独自の存在感を主張しなければならない。どれもこれも和楽器奏者の方にとっては未知の世界であり、試行錯誤の連続だったに違いない。
それでもこのライブに参加する意義、それはもっと多くの人に和楽器の魅力を伝えたいという熱い思いだ。ヒダノ修一さん自身、かつてはかまやつひろしさんとバンドを組んだり、様々な形で和楽器の魅力を広める活動を行っていた。そもそも日本人なら誰でもそのDNAに和楽器の魅力が刷り込まれている。祭りの太鼓や笛の音を聴けば誰でも心が踊るものだ。
この日のライブでも和楽器の参加がとても効果的だった。和楽器が加わることで聞き慣れた楽曲がまた違うイメージになる。巨大なセットや600名を超えるお祭りパフォーマンスのようにワイドショーには取り上げられないが、しっかりとサウンド面でも「祭り」のコンセプトが追求されているのだ。そのためにヒダノさん以下、和楽器奏者の方々は幾多の困難に立ち向かった。

和楽器奏者の方のライブ後のブログを見ると、こんなことを書いている方がいた。
「これからの自分の追求したいことが見えた気がする」
それは和楽器というものの新たな可能性ではないかと思う。巨大スタジアムで6万人の人に和楽器の魅力を届ける。未知の世界に挑戦し、その手応えをしっかりと掴めたのではないだろうか。
そして和楽器隊の中にまだ18歳の青年、一彩くんが太鼓奏者として参加していた。彼がライブ後にこんなツイートをしている。
「天手力男(ライブのオープニング曲)を演奏しながら涙が止まりませんでした」
一彩くんは、実はヒダノ修一さんの息子さん。父親の後を追い、和楽器奏者としての道を歩き始めたのだ。いくら父親の背中を見てきたとはいえ、まだ18歳。将来について不安もプレッシャーもあっただろう。しかし、6万人の熱狂に迎えられたオープニング。その感動が彼の心を動かした。和楽器の伝統を受け継ぐものとして、一人の表現者として、この日のライブで流した涙は彼にとっても忘れられないものになったに違いない。いずれ彼が世界的な和楽器奏者になったとき、その原点としてこの日の涙を思い出して欲しいと思う。
実は一彩くん、その生真面目な性格もあってバックステージではももクロメンバーに散々いじり倒されていたらしい。彼女らにとって周りの関係者は当然ながら年上ばかり。そこに同世代の一彩くんがいれば、これはもう格好の遊び相手だ。そんな一彩くん、ももクロメンバーについて「オフタイムではわちゃわちゃしていても、いざステージに向かうと表情ががらりと変わります」とツイートしている。同世代でありながらアイドルとして最前線に立つ彼女らの存在は、同じ表現者として一彩くんにも大きな刺激となったはずだ。

通常のバンドに和楽器を加えてひと味違うサウンドを創りたい。それは必ずしも和楽器奏者を加えなくとも実現できる。事前に録音したテープをバンド演奏に合わせて被せればいい。リハーサルの時間、楽器や音響機材のセッティング、そして何より奏者のギャラ。すべての経費、手間を削減できる。ステージ上で再現できない音をテープで被せること、それは決して悪いことでは無い。ライブにおける効率を考えれば当然のことだ。
しかし、それでは人の思いはつながらない。奏者の人が新たな目標を見つけることも無ければ、若き和楽器奏者の一彩くんが涙を流すことも無い。様々な熱い思いが込められるライブにはならないのだ。
もちろん今回の和楽器隊のブッキング、ももクロメンバーが主導権を取ったわけでは無い。それはステージセットやパフォーマンスだけでなく、サウンド面でもしっかりと「祭り」を表現したいという運営陣の思い。そしてバンドリーダーであり音楽監督でもある武部聡志さんのある意味、遊び心だ。ヒダノさんによると、当初は和楽器参加の曲は少なかったらしい。ところがリハーサルで音を合わせている内に武部さんが「この曲もやりたい、あの曲もやりたい」と言い出し、どんどん和楽器参加曲が増えていったらしい。その都度のアレンジ作業はヒダノさんにとっても大変だったらしいが、結果ライブとして素晴らしいものになった。
そしてももクロメンバーにとっても和楽器隊との共演は大きな財産になったはずだ。普段はあまり接することのない和楽器をバックに歌い踊る、そして一流の奏者と共にステージを踏む体験は貴重だ。それは彼女らの音楽対応力をさらに強くする。

ももクロが世間に知られ始めた2011年頃、彼女らのライブは「常に全力」が最大の魅力と言われてきた。アイドルらしからぬ激しい踊り、流れる汗も気にしない全身全霊のパフォーマンス。それが多くの人の心を捉えたことが飛躍のきっかけと言われてきた。もちろんそれは間違いでは無い。しかし「全力」とは決して彼女らのフィジカルの部分だけでは無いのだ。「祭り」のコンセプトの実現のために、様々な困難を乗り越えて和楽器隊を導入した運営陣。そして期待に見事に応えた奏者の方々。
この日のライブは映像作品としてリリースされている。僕は今でもそのDVDをよく鑑賞する。ビジュアル面でもサウンド面でも実に素晴らしいライブだ。クライマックスでは和太鼓奏者の4人が太鼓を肩にかけ、ステージ前面へ躍り出てきて演奏する。その中には一彩くんもいる。若さいっぱいに笑顔で躍動する彼を見るとなぜか心が熱くなる。やっぱりライブは人の情熱だ。実は僕は書き込みにおいてミュージシャンの興業を「コンサート」とは表記しない。やはり「ライブ」だ。ライブ〜LIVE、つまり「生きている」こと。僕がももクロのライブに何より感じるのはそれなのだ。それは彼女らのパフォーマンスだけでは無い。ライブをライブとして高めようとする、運営陣の心意気なのだ。

この翌年、2015年の夏のライブにもヒダノさんを中心とする和楽器隊が参加した。その規模はさらに拡大し、総勢何と19名。そして通常バンド抜き、和楽器のみで演奏された楽曲も披露された。これも面白い試みだ。2014年の初参加から1年、和楽器隊はさらに進化したのである。和太鼓奏者の中には、やや逞しさを増した一彩くんの姿も見える。こうして点が線になっていくのも、ももクロの音楽活動の魅力のひとつだ。

今年の11月、NHKにて「ももクロ和楽器レボリューション」なる番組が放送された。これはももクロメンバーが進行役となり、彼女らはもちろんゲストのデーモン小暮さん、ナオト・インティライミ、May Jが和楽器演奏をバックに歌い、和楽器の魅力を再発見するという企画。和楽器の演奏、音楽監修はヒダノ修一さん。さらにももクロメンバーがそれぞれ和楽器に挑戦するという企画も披露された。ここ数年、和楽器が世界的にブームになっているという背景もあるけれど、やはり2014年の夏ライブから生まれたヒダノさんとももクロの結びつきがあってこその企画。和楽器演奏陣はももクロライブに参加したメンバーで、収録もスムースに進んだらしい。ライブで生まれた絆がこうして新たな企画につながるのもまた楽しい。

ももクロが僕たちのようなオジサン世代を夢中にさせる理由のひとつ。それは音楽に対する真摯な姿勢にある。より良いもの、より新しいもの、そのための挑戦に決して手を抜かないことにある。今回取り上げた和楽器奏者との交流もそのひとつだ。音楽的な要素はもちろんだけど、そこに年齢やキャリアを超えた表現者としての絆を感じる。
武部聡志さんがこんな発言をしている。
「ももクロには引力がある。僕らミュージシャンも引き付けられているし、そこで新しい出会いや新しい何かが生まれるのがすごく楽しみですね」
武部さんの音楽家としての実績は一度Wikipediaで調べてみて欲しい。2013年の春以降、ももクロの大規模ライブの音楽監督を務めている武部さんのこの発言こそが、ももクロが僕たち世代を夢中にさせる理由を端的に言い表している。というわけで、それを裏付ける様々なお題をこれからも書き込んでいく予定。

年内ぎりぎりで何とか、ももクロをテーマに書き込むことができた。ももクロを語るとなるとついつい熱くなってしまうから、いろいろと脈絡の無い文章になったかと思うけれどご勘弁を。
さて今年ももう終わり。2016年、ももクロは様々な活動を行ってきた。その中でも最大のニュースはやはり、2月に2枚同時に発表されたニューアルバム。それに伴う5大ドームツアーの開催では無いだろうか。特に2枚のニューアルバムはそのクォリティ、コンセプト共に語るに尽きないアルバムだ。
amazonのレビューからいくつか言葉を拾ってみる。
「自分にとってももクロとレッドツェッペリンは同じ並び」
「青春をクイーン、エアロスミス、ディープパープル、etcと共に過ごした方にぜひ聴いて欲しい」
ピンクフロイドやEL&Pを例に出して「アイドルのアルバムに大げさな、という人は一度耳を傾けるべき」
内容から察するに投稿者はいずれも僕たち世代だろう。もちろん、僕も同じ意見だ。次回はそれをテーマにお話させてもらいたい。
というわけで2017年は心を入れ替えて定期的な書き込みを目指します!では皆様、ぜひぜひ、良いお年をお迎えになっておくんなまし〜。

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